遊んでるうちに賢い心ができあがる

前言 遊び

昔から「よく学びよく遊べ」または「よく遊びよく学べ」といいます。

梁塵秘抄(りょうじんひしょう)より

編 後白河上皇

遊びをせんとや生(う)まれけむ

戯(たはぶ)れせんとや生(む)まれけむ

遊ぶ子どもの声きけば

わが身さへこそゆるがるれ

解釈のひとつは、

遊んでいるときが子どもの生まれつきの姿なのだなぁ

遊んでいる子どもの声の純粋さには

権謀術数の世界に身を置く私でさえ、心を揺さぶられてしまうよ、

というものです。
今から800年前の平安時代に後白河上皇という方がいて、5代の天皇に院政を布き平清盛から源頼朝まで手玉に取った政治家天皇/上皇でした。この方は流行歌が大好きで、カラオケもない時代ですから自ら歌い作曲し宮中の女官や公家たちにも歌わせて楽しんでいました。好きが高じて流行歌「今様(いまよう)」の歌集を編集して「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」と名付けました。この歌集でもっとも有名なのは、子どもの遊びをうたったこの歌です。

さて約800年後のいま、
世界中の科学者が激烈な競争をしている分野は脳科学です。日々進歩する脳科学から子どもの脳の発達について驚くべき結果が出ました。それは、“子どもだけの屋根のないところでの遊び”をたっぷり経験することが、子どもが順調に育ち社会に出て活躍するために非常に重要だということです。

 

『人生で必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ』という本を書いたアメリカのロバート・フルガムは哲学者ですが、彼は幼稚園の砂場で何を学んだのでしょうか?

  • なんでもみんなで分け合うこと
  • ずるをしないこと
  • 人をぶたないこと
  • 使ったものは必ずもとのところに戻すこと
  • 散らかしたら自分で後片付けをすること
  • 人のものに手を出さないこと
  • 誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと
  • 食事の前には手を洗うこと
  • トイレに行ったらちゃんと水を流すこと
  • 釣り合いの取れた生活をすること、それは毎日、少し勉強し、少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして少し働くこと
  • 家から外へに出るときは車に気をつけ、手をつないで、はなればなれにならないようにすること
  • 不思議だな、と思う気持を大切にすること
  • 金魚も、ハムスターも、二十日ねずみも、発泡スチロールのカップにまいた小さな種さえも、いつかは死ぬ。人間も死から逃れることは出来ない
  • 子どもの本で覚えた言葉、何よりも大切な意味を持つ言葉は、
    「自分の眼で見てごらん」

これらを脳科学から解釈すると、正常な人間が備えるべき社会的常識と「心の理論」となります。このような常識と心の持ち方を身に付けるのは、2歳ごろから6歳ぐらいまでの年齢が最もよく(臨界期といいます)、この時期を過ぎてしまうとなかなかうまくいきません。


砂場で思い切り遊べる環境に置いてあげると、子どもの心に深い智惠と常識が根を下ろしますが、遊ぶ環境がなくまわりの愛情が薄く虐待などで傷つけると、心がひどく萎縮して大人になっても社会的常識がない、他人を思いやる心が乏しい人間になることが多いのです。

前言 遊び