◇ヒトメタニューモウイルス感染症(hMPV)(2019.7.31)

(1)症状は、つよい咳が特長です。

病気の始まりから約1週間ぐらい、つよい咳が続くことがあります。
ときには、呼吸するたびにゼイゼイとかヒューヒュー音(喘鳴)が出ることもあります。
喘鳴は、いちばん細い気管支から出るため気管支喘息やRSウイルス感染症とよく似ています。

(2)発熱は3日~5日くらいと長めです。

(3)流行時期は3月~6月で、RSウイルス感染症と入れかわりに流行がはじまることが多い。

(4)感染のしかたと感染の予防

飛沫感染と接触感染によってうつるため、乳幼児の多い保育園では感染が広がりやすいです。
鼻汁や咳の細かなしぶきに含まれるウイルスが手や物に付着し感染を起こします。保育者の手などから接触感染します。咳と鼻汁がある乳幼児の世話をしたあとは保育者の手洗いがとくに重要です。

(5)治療

hMPV感染症に効果のある抗菌薬はなく、症状をやわらげる対症療法です。ふつうは、「じきになおるからね」と話して安心させてあげたうえ、できるだけ居心地よくしてあげて治るのを見守ります。高熱が4日以上や咳がひどく呼吸が苦しそうだったり水分があまり飲めない場合は、医師の判断により入院して輸液や必要なら加湿酸素投与などを行います。

(6)予防

現在のところワクチンはありません。
ヒトメタニューモウイルスは、2001年に初めて発見され、小児科医院の外来で迅速ウイルス検査によりおよその診断ができるようになったのは最近です。検査で100%判明するとはかぎりません。
小児の呼吸器感染症の5~10%を占めるといわれ、赤ちゃんが生まれる前に母親から譲られる抗体は生後6カ月くらいで消失するので、この時期から感染し易くなり2歳までに50%が、10歳までにほぼ全員が感染します。(ふつうの風邪として経過することも多いのです)

とくに乳幼児ではRSウイルス感染症とよく似た細気管支炎をおこすため呼吸するとゼイゼイ音(喘鳴)が出て、喘息様気管支炎、細気管支炎、肺炎などと診断されることもあります。

いったん治っても獲得する免疫が弱いため再感染がよくあります。低出生体重児や骨髄移植や心臓移植、肺移植などを受けた患者さんは重症化しやすく、ふつうの成人や高齢者も感染する人がかなりいることが分かりました。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の患者さんの急性増悪にこのウイルスが関係しているといわれます。合併症としてまれですが脳炎、脳症を起こす可能性もあります。