2020年1月20日
勝又正孝
この度はからずも旭日雙光章の叙勲を賜り拝謁の栄に浴すことがありましたので皇居参内の始終を報告させていただきます。
厚労省を出たバスが、
坂下門で壕を渡り皇居に入ろうとするとき宮内省の職員から注意があり、写真撮影は控えるようにと。えーっ、せっかくの機会にそれはないよ、と思うけれど車内は緊張して反論する雰囲気ではありません。
「豊明殿」は最大の宮殿だそうで駐車場も広大です。バスの中で1時間半も待機ですが降りて歩き回るのもご法度です。お昼どきでおなかも空いてのども乾いてきます。見渡してカフェも休むところもないし弁当も出ないので非常用に持参したクッキーを食べOS1ゼリーを飲みます。
トイレは豊明殿をお借りできるのですが、訪問先で借りるのは格好がよくないと控えました。ぞろぞろと東名のサービスエリアで観光バスから降りてトイレへ行くのと似ている。もっとも生理現象ですから格好つける場合ではないです。拝謁に関して大きな問題はトイレなのです。厚労省で受勲者と同伴者約四百名が大臣祝辞とオリエンテーションを受けたときも「トイレを忘れずに」という注意がくり返しありました。
自分はトイレ長持ちで4~5時間はふつうで、先日は12時間半の最長不倒(出)時間を樹立したばかりです。このときは朝8時に就寝し、というのもリーガ・エスパニョーラが7時に終わって入浴して就寝し目覚めて時計を見ると8:30で、30分しか寝なかった?と見れば窓は暗くなっていて夜だと分かったのです。このかん三食ぬきでトイレも行かなかったのです。家内は、とうとう長い眠りについたのかと心配したと申しますが呼吸はしているのに。
ようやく時間になると降車して列をつくります。受勲者は7列に同伴者は5列です。整列したらそのままの並びで宮内庁職員の先導で殿上に向かって巨大な階段を登るのは修学旅行を思い出します。階段両端に儀仗兵が1ミリも動かずに起立しているのはすごい。ゆるやかとはいえまず1階へ、入ってから2階へのぼるので足弱の方や着慣れない晴れ着にきつい草履のご婦人はたいへんです。来館者用のエスカレーターやエレベーターが必要ですね。
豊明殿の正面をおおう有名な巨大壁画の題は「豊旗雲」といい館名もそこから出たのですが残念なことに、茜色の大きな雲の何本かに分かれうねりつつ細くなる先端が巨大なゆで蛸の足にしか見えませんので思わず、隅田川左岸のアサヒビール本社の上に浮かぶフィリップ・スタルク制作の巨大オブジェ、通称「金色のunko」を想起してしまいます。
閑話休題。職員が建築の結構を縷々説明していただいたのち儀式の進行説明と注意事項です。陛下からお言葉がありました場合は簡潔に明瞭にお返事してください。皆さまから陛下に向かって言葉をおかけしてはなりません、と言われて一同失笑。礼をわきまえない若い東大出身の議員が陛下に話しかけた事件があったためでしょう。
前方左の巨大な戸がごろごろと開いて全空間が静まり返ると侍従の先導で天皇陛下がゆっくりと軽く会釈をしながら歩んで来られます。その後に雅子皇后は見えなくて侍従長が従っています。がっかり。陛下は5メートル前を通り過ぎて壇に登られます。壇の中央にお立ちになり簡潔な祝辞を賜りました。それから外側を回って同伴者の集団とのあいだを歩いて戸口へ戻られ、もう一度礼をして退場されました。
失礼を省みずに申しますが陛下は柔和ながら品格すぐれこれまでなかったような威厳をお持ちで、パレードで拝見したよりはるかに厳しいオーラをまとわれておられるように感じました。
そののちバスごとに受賞者と同伴者が1列ずつ二列縦隊をつくり階下ロビーで写真撮影をしてから乗車し、ご下賜品が配布され、日比谷公園西側に面した厚労省に戻って解散となりました。ホテルに戻り写真室で、モーニングに勲章を装着した一世一代のハレ姿を撮影してもらいました。