麻しんの感染報告がありました。(2011/5/12)

最近になって、注目すべき麻しん(はしか)の感染がありました。

Ⅰ.この感染者の例から学ぶことがいくつかありました。
1)フランスのようなワクチン先進国にも麻しん患者がいること。
   このような海外で感染を受けた輸入麻しんが2011年にはすでに都内で3例あります。
2)家庭の方針で予防接種を受けていない人が罹ったこと。
3)大人の場合は、内科に受診することが多く、麻しんの診断が遅れ、
   家庭や会社や公共交通機関でまわりの人にウイルスをばらまくことが多いこと。
4)幸いなことに、患者さんは被災地に行くことはありませんでした。
   避難所で、体力や免疫力が弱り栄養も低下している人に感染を起こさずに済み不幸中の幸いでした。  

欧州(フランス)からの輸入と考えられた麻疹症例 (2011年4月20日の報告より)
【始まり】
   平成23年4月4日、30代の男性が、発熱、咽頭痛、咳嗽、全身の発疹を訴えて病院にかかりました。
【経過】
   2011年3月下旬にフランス国内のスキー場へ行った際に発熱、発疹が出ている小児と接触しました。
   3月30日、震災関連の取材のため、単身来日。
   4月 4日、悪寒、発熱、咽頭痛、咳嗽が出現し、都内滞在先で医院に受診しました。
          かぜとして、抗菌薬などの処方を受けたが症状は改善しなかった。
   4月 6日、頭部から全身に拡がる発疹が出現しました。
   4月 7日、再び医院を受診したところ、麻疹らしいとして入院となりました。
          特長ある症状は、結膜充血あり、頬粘膜にコプリック斑あり、咽頭発赤あり、全身に癒合傾向
          のある紅斑性小丘疹があり、数日後に退色し色素沈着となりました。
【予防接種歴】
 家庭の方針で、麻疹ワクチンを含めて予防接種を受けていませんでした。

 

Ⅱ.静岡県では数年間、麻しん発生がありませんので、東京都の状況を見せてもらいましょう。

東京都感染症情報センター (2011年2月10日更新)
麻しん Q&A  

2010年には東京都内で麻しん患者はどのくらい発生しましたか?
2010年は東京都内で計76件の患者報告がありました。
季節による患者発生の傾向は認めませんでした。
年齢別では、1~4歳(20件)が最多、次に多いのは、35~39歳(9件)と15~19歳(7件)でした。
小児だけでなく成人でも麻しんに注意しなくてはいけないことが分かります。
ワクチン接種歴は、接種歴なし23.7%、1回接種38.2%、2回接種6.6%、不明31.6% と、1回接種が最も多くなっていました。
2010年の麻しんの発生状況は以前と比べてどうですか
2008年から全国で、診断した患者全員を報告するという形式に変更になりました。
2008年以降、患者報告数は年々減少しています(2008年1174件、2009年111件、2010年76件)。
年齢別の患者割合では、2009年と同様に2010年は1~4歳(26.3%)及び35~39歳(11.8%)の年齢層が多くなっています。
 
麻しんを予防する最も有効な手段はワクチン接種です。日本全国で、2006年6月2日から、2回の定期接種が開始されました。
 第1期は1歳児。
 第2期は5歳以上7歳未満で小学校就学前の1年間にあたる者(第2期)が対象です。
 2008年4月1日から、定期接種の対象が拡大されました。(5年間の期限付き)
 第3期は、中学1年生相当年齢の者
 第4期は、高校3年生相当年齢の者
患者をワクチン接種歴から見ると、2回接種した者が年々増加しています(2008年1.0%、2009年1.8%、2010年6.6%)。 
接種歴がない患者の割合は、2008年(39.8%)、2009年(14.5%)、2010年(23.7%)と2010年には増加しています。
第2期の接種率は?
2006年から始まった東京都全体の第2期の接種率(東京都福祉衛生統計年報データ)は、
2006年度80.0%、2007年度87.1%、2008年度88.8%、2009年度89.2%と、接種率が上がり、患者報告数の減少につながったのでしょう。
2010年に都内で発生している麻しんのウイルス学的な特徴は
2010年に都内で分離・検出された麻しんウイルスは3件で全てA型でした。
A型はワクチン株と同じで、3件中2件は検体採取数日前にワクチンを接種していました。
他の1件はワクチン接種状況が不明でした。
他の道府県ではA型4件、D4型1件、D5型1件、D8型1件、D9型14件、H1型2件が検出されています。
なぜ周期的に麻しんが流行するのですか?
日本全国の麻しん患者が年間1万人以上出た頃にも、流行は周期的でした。
その頃はワクチン接種率が低かったので、乳幼児患者がほとんどでした。大規模な流行があると免疫を獲得する人が増え、しばらくは流行が収まるのですが、流行した年以後に生まれた乳幼児など、免疫のない人が増えてくるので、また大規模な流行が発生するという繰り返しです。
2010年は流行が認められませんでしたが、2008年の流行では10代後半から20代の大学生患者が多く、そのうち多くはワクチン接種歴のない人でした。
患者の中にはワクチン接種歴のある人も約4分の1程度含まれており、麻しんの発生が少なくなったために、ワクチンの効果が自然に低下していく者が蓄積されていた可能性が考えられます。