最新食物アレルギーの紹介 (2012/3/10)

9.除去食療法および代わりになる食品


食物アレルギーの治療では、原因食物を食べないようにする除去療法が基本です。
症状を誘発しないで②家族や同級生となるべく同じものを楽しく食べることが大切です。
治療スケジュールは患者により大きく変わるため一律な記載はできません。

 

  1. 正しい診断:親の思い込みで○○○が原因と断定し、根拠がない除去食を子どもに強いる事例が多いので、正しい診断が必要です。
  2. 特異的IgE抗体の数値が高い場合、乳幼児では症状が起こりやすいが年長から小学生になると食品との関連が弱くなることが多いのです。
  3. 除去するだけでなく、栄養が不足しないように代替品使用を適切に利用します。
  4. 食品表示の盲点があり、書いてないから安心といえません。

    特定原材料等の名称(厚労省の呼び方)

    特定原材料5品目
    (表示義務)

    卵、乳、小麦、ソバ、落花生

    特定原材料に準ず
    (表示の推奨)
    20品目

    あわび、いか、いくら、えび、オレンジ、かに、キウイフルーツ、くるみ、さけ、さば、ゼラチン、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご

    ◇ 表示義務があるのは、箱や袋で容器包装されているか、缶やビンに詰められている加工食品中の原材料として含まれる25品目に限られます。
    ◇ 表面積が30c㎡以下の小さな容器のもの、対面販売の惣菜や店頭調理品など容器包装がないものは特定原材料についても表示義務はありません。
    ◇ 量的には、製造時に加工食品1g中に数μg以上の特定原材料を含む場合なので、
    1食分に増えるとアナフィラキシーを起しうる抗原量に達する場合がある。
    ◇ 乳糖は糖質としてでなく、「乳」と表記されます。

  5. インタール内服により腸からの食物抗原吸収を抑えることも考慮します。
  6. 子どもの成長と発達を定期的にチェックし、発育への影響がないことを確認することは除去食療法には必須です。そのために、母子手帳にある成長曲線と年齢ごとの発達チェックのページはとても便利にできています。
  7. 食事は、家族や同級生となるべく同じものを食べ、楽しく食事どきを過ごすことが子どもの将来のために必要です。心の栄養を取ることが身体の栄養と同じぐらい重要です。
  1. 卵アレルギーの代替食品
    卵を含む主な食品のアレルギーの強さ

    抗原の強さ

    除去する主な食品

    最も強い

    生卵、半熟卵、マヨネーズ

    強い

    卵料理(オムレツ、茶碗蒸し、卵焼き、スクランブル卵)

    やや強い

    卵を多く使ったお菓子(カステラ、ケーキ、卵ボーロ、
    プリン、アイス)
    練り製品(ハム、ソーセージ、かまぼこ)

    弱い

    食パン、クッキー、ビスケット、天ぷら粉、麺類のつなぎ
    固ゆで卵黄


    卵のたんぱく質にはいくつかあり、加熱により起こりにくくなる種類もあります。
    卵白より卵黄の方がアレルギーを起こしにくいことが多い。
    卵1個(50g)のたんぱく質の代わり:木綿豆腐1/3丁、納豆40g(小1パック)、鯵1/3尾、豚肉薄切り1枚、牛乳190g(約1カップ)
  2. 牛乳アレルギーの代替食品
    牛乳(ミルク)は、ヨーグルトなどの発酵食品もあわせると非常に多くの食品に含まれています。加工品に含まれる乳成分の表示は多種類で症状が強いときには注意が必要です。
    アレルギー用(アレルゲン除去)ミルクは離乳食や食事の栄養補助にも使用できる。
    精製アミノ酸のみを使用:エレメンタールフォーミュラ(明治)、カゼインを分解したニューMA1、低脂肪MA1、ペプディエット、MAmi(カゼインと乳清たんぱく分解乳配合)、ミルフィー(乳清たんぱくのみ分解)、
    アレルゲン性を低下させたミルク(除去食ではない):E赤ちゃん、アイクレオHI、
    牛乳200mlのたんぱく質に代わり:木綿豆腐90g、豚肉35g、カツオ25g
  3. 小麦アレルギーの代替食品
    小麦は、パン,うどん,ラーメン,スパゲッティーなど、主食となる食品、ケーキ,クッキー,
    ドーナッツなどのおやつや離乳食に使いやすい麩にも多く含まれます。
    加熱してもあまり低アレルギー化されないので、天ぷら,フライ,カレーやシチューのルーなど少量でも除去が必要になることが多いのです。
    市販の醤油は、醸造過程で分解されるため使用可能であるといわれます。
    麦茶(大麦),オートミール(オーツ麦,カラス麦)などは起しにくいが、程度が強ければ除去の対象となります。
    代替食は、米を中心にあわ,ひえなど雑穀も使います。パンの代わりに米パンがありますが、味噌汁やお浸し,煮物,鍋料理など和食によく合うといわれます。小麦粉の代わりに片栗粉,コーンスターチ,くず粉,さごやし粉などを利用します。
    低アレルゲン化した小麦を使用した商品もあり、アレルギーの程度が強くなければ使用可能です。
  4. 豆類と大豆の代替食品
    大豆は良質な植物性たんぱく質と豊富なカルシウムを含み、気候変動や害虫に強くやせた土地にも成育できる作物で、日本はじめ東アジアでは古くから西欧にはない優れた食生活を構築してきました。そのため多くの食品が除去の対象になります。大豆,枝豆,豆腐,きな粉,豆乳,おから,油揚げ,大豆油などですが、発酵食品である味噌、醤油、納豆、もやしなどは抗原性が弱く、食べられることもあります。
    代替の植物性たんぱく質は、麩,餃子やシュウマイの皮などの小麦たんぱく。
    動物性たんぱく質は、魚,肉,卵,乳製品。大豆油の代わりは、菜種油,オリーブ油,シソの実油,エゴマ油。調味料の代わりは、ダイズノン醤油(小麦),魚醤油,ひえ醤油,あわ醤油,ダイズノン味噌などがあります。
    ピーナッツアレルギーは欧米では非常に多いですが、少なかった日本でも使用が急増するに伴い増加傾向にあります。ナッツ類は抗原性が強いため、ピーナッツ,ローストナッツ,ピーナッツバター,ピーナッツクリームは除去の対象になります。