4.食物アレルギーはどんな症状が出る?
食物アレルギーの主な症状
発現する臓器 | 症 状 |
皮 膚 82.0% |
じんましん、皮膚の発赤、かゆみ、発疹、アトピー性皮膚炎 |
呼吸器 50.4% |
喘鳴、咳、呼吸困難、咽喉頭浮腫 |
眼鼻等 41.8% |
眼瞼浮腫、流涙、結膜充血、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、 |
消化器 26.8% |
嘔吐、悪心(嘔気)、下痢、腹痛、口唇違和感、口唇浮腫 |
神 経 |
頭痛等 |
全身性 28.6% |
アナフィラキシー(ショック症状) |
特殊なもの |
口腔アレルギー症候群、食物依存性運動誘発アナフィラキシー |
- 約2時間以内に出る即時型では食物摂取との関係を推測しやすいですが、全身じんましん、喘鳴、呼吸困難などの重い症状やアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。
- 症状が出るまで2時間以上かかる非即時型では、食物アレルギーによることに気付かれないことも多く、アトピー性皮膚炎や消化器等の症状が食物とどの程度関連しているのか、明確な頻度を出すのは困難です。
- 皮膚症状
即時型でもっとも多いのはじんましんです。1ヵ月以内におさまるものは急性じんましん、1ヵ月以上症状が反復するものは慢性じんましんと区別します。
じんましんには、ウイルス感染に伴うものや寒冷・温暖、皮膚の圧迫によるもの、つよい
ストレスによる心因性のものも、思春期から成人ではよく見られます。
非即時型の多くはアトピー性皮膚炎です。 - アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの関係は?
アトピー性皮膚炎の原因は食べものだと聞きますが、原因食品は生涯食べられないのですか?
アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与しているかどうか、小児科と皮膚科の間に論争がありましたが、両科にガイドラインが出来てある程度コンセンサスが出来ました。
しかし考え方のちがいは根づよく残るので、児童が何科に受診したのか注意が必要です。
すべてのアトピー性皮膚炎が食物アレルギーではありませんが、乳児期の関連性は3割から9割と幅があります。(施設の機能で異なるため)小腸の消化吸収機能が未熟な3歳ごろまでは、食物が関与する例が非常に多いことは確かです。
原因食品が卵、牛乳、小麦、大豆の場合は、小学校入学のころには8割くらいの子どもは食べられるようになります。
乳児期とくに生後数か月以内に、顔から始まってかゆみの強い湿疹が2か月以上続く場合は食物アレルギーが原因のことが多いのです。 - 呼吸器症状
アトピー性皮膚炎の次に多い症状です。空気の通路を上気道と下気道に分けますが、
食物摂取後数分から2時間以内に、上気道では口の中やのどの奥にかゆみや変な感じ、食べものがつかえる、息が吸いにくい、声枯れ、くしゃみ、鼻水、鼻閉などが出ます。
下気道では、咳、喘鳴、呼吸困難などが出てきます。
乳幼児ではことばで表現できないことが多く、原因不明の不機嫌やぐずり、食欲低下に見えることがあります。
離乳期から幼児期になると、症状は単独に出るよりも他の臓器の症状と組み合わされて出ることが多くなります。 - 消化器症状
即時型の消化器症状は、食物摂取後数分から2時間以内に、口の中がイガイガする(違和感)、唇が腫れる、気分が悪くむかむかする、腹痛発作、嘔吐、下痢などが出現します。
このときしばしば、皮膚症状や呼吸器症状を伴います。
非即時型として慢性下痢もあります。食物アレルギーと気付かずに原因食品を食べていると下痢が続き、稀ですが腸からたんぱく質が漏れ出し体重増加不良や栄養失調になることもあります。
特殊な形として、後で述べる口腔アレルギー症候群があります。 - 食物によるアナフィラキシー
※アナフィラキシー:急性の全身性かつ重度なI型過敏症のアレルギー反応の一つ
- アナフィラキシーショックは、小腸粘膜で吸収されたアレルゲンが循環血液内でIgE抗体と抗原抗体反応を起し血管壁の平滑筋に作用した結果、全身の末梢静脈が拡張し、大量の血液が末梢静脈内に滞留、それで循環血液量の不足をきたし、全身の細胞への酸素供給が欠乏、血圧も低下し、脳の循環血も不足するため意識の低下または喪失が起こり、酸素不足による諸臓器の機能低下が起これば生命も危うくなります。
- アナフィラキシーショックが起きたら出来るだけ早くアドレナリン筋肉注射が必要です。
このような経験がある人は、エピペンの携帯が役立ちます。 - アナフィラキシーは、食物、風邪薬、スズメバチなどが原因で起こることがあります。
どの食物もアナフィラキシーの原因になる可能性がありますが、乳幼児では、卵、牛乳、小麦のご三家です。最も多い症状は皮膚で、9割ぐらいにじんましんが出現します。ほかに咳、喘鳴、呼吸が苦しい、眼瞼や唇の腫れ、のどの奥が腫れて飲み込みがつかえる、腹痛、下痢、嘔気、嘔吐などが合わせて出ることもあります。
学童から成人になるとエビ・カニなど、フルーツ、小麦、魚類が多くなります。
ソバやピーナッツは、ショックを起しやすい食品として有名ですが、これは発病率が多いのであり、実際に起こる例数では卵、牛乳、小麦が上回っています。
- 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
- 食物アレルギーの特殊型で、食物摂取後数分から2時間以内に一定の運動をしたときにだけ、湿疹やじんましんで始まり、数分後には冷や汗、四肢のしびれ、意識混濁や意識消失、呼吸困難等アナフィラキシー症状が誘発される発作です。
- 運動は、ウオーキングからサッカーのような激しいものまでありますが、強い運動に起こる傾向があります。
- 乳幼児期には稀で小学校高学年から始まり、部活をする中学、高校生で増加し成人に多くなります。自験例(28歳男性、結婚後数か月の方)のように男性に多く、原因食物は小麦やエビ・カニが多いと考えられています。アスピリン等の解熱鎮痛剤を服用していると誘発されやすいという報告があります。
- 運動誘発発作を起したことがあっても、日常の食物制限や運動制限は不要ですが、原因食品を食べたあと約4時間は運動を控え、逆に運動するつもりなら約4時間前から原因食物を食べないようにしましょう。
- 皮膚症状
◎運動中にじんましんが出たときには、即座に中止しましょう。じんましんが出ているときには運動してはいけません。