最新食物アレルギーの紹介 (2012/3/10)

最新食物アレルギーの紹介(2012/3/10)

1.最新のアレルギー学の進歩 ―小児アレルギー疾患に関するパラダイム変換―
(パラダイム変換とは、天動説から地動説へのように人生観がひっくり返る考え方の転換)  
(国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科医長 大矢幸弘医師より引用改変)

  1. 生まれてくる子どもがアレルギー病にならないように妊娠中や授乳中に母親が卵・牛乳・小麦などを除去しても、除去しなかった場合に比べて子どもの食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症率は低くならない(つまり予防効果はない)という証拠は、2006年発表の権威あるCochrane systematic reviewに記載されています。
  2. 2008年の米国小児科学会誌に掲載された論文は、離乳食を始めた時期が遅い子どものほうがアトピー性皮膚炎は多い(有意差はないが食物アレルギーも多い)とあります。
  3. 米国のアレルギー臨床免疫学会誌に掲載された論文には、英国の子どもはピーナツを食べ始める時期がイスラエルの子どもよりずっと遅い(イスラエルの子どもは0歳から食べているが英国の子どもは3歳ごろまで制限している)のに、子どものピーナツアレルギーの有病率は、英国ではイスラエルの10倍もあることが示されています。
  4. これらの結果から、米国小児科学会は子どものピーナツアレルギーの予防ガイドラインを取り下げました。従来は予防のため3歳までピーナツ摂取を遅らせるように推奨していました。
  5. 「アレルギー疾患なのだから前もってアレルゲンを除去すれば発症予防できるだろう 」という考えは単純すぎる、というのが最先端の研究の見解です。
  6. とはいえ、発症してしまった人は基本的に除去が必要になりますので、患者さんには混乱をもたらさないよう説明が必要となります。
  7. 除去しているのにどうして発症するのか、今までは食物アレルギーがあるから皮膚にアトピー性皮膚炎が出てくるという考えでしたが、皮膚に湿疹があるから食物アレルギーになりやすいのかもしれません。昔の子どもは乳児期に湿疹があっても、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎になる子は少なかった、という反論がありますが、
  8. 以上をまとめますと、
    私たち現代人は、昔の常識が通用しない体質に変わりつつあるらしいのです。
    毎月調べている5歳児の特異的IgE抗体価陽性率は70%~90%にも達し、多くの子どもがほとんどアレルギー体質といえるので、昔の子どもと違ってアレルゲンに感作を受けやすくなっていると思われます。毎日食べているものも、ここ30年~40年間に急激な西欧化が起こり、食材原産地が世界中に拡大し、大量の添加物や大量の農薬が使用されるなど、食事の献立、生産過程、加工方法、流通経路の変化が激しく、生活環境の変化も含めて、身体の対応が追いつかない状況におかれています。