風邪の発熱のはやわかり | 発熱について

風邪の熱で脳障害が起きるでしょうか?  答え)いいえ、起きません!
これは、多数の医学的根拠により判明していますが、次の三点に要約できます。

A) 風邪(感染症)の発熱で、脳は障害を受けません (脳炎などの合併症は例外です)
B) 発熱があると、風邪が治るまでの時間が24時間以上早く治ります
C) すべての生物は(ライオンやネズミやとかげも!)体内へ侵入した微生物の増殖を抑えるため発熱を利用しています

 

(1)根拠になる多くの研究の一部を紹介します

  1. 「発熱が、感染に対する宿主の防御反応であることを支持する証拠は山のようにあり、あらゆる動物で何百万年ものあいだ受け継がれています」 
    生理学者マット・クルーガー、ラブレイス研究所(有名な米国の生物科学研究所)
  2. 冷血動物であるトカゲは恒温動物が持つ体温調節センターがありません。もし病原体の感染を受けると、体温を2℃くらい上げるため日の当たる暖かい場所に移動することが知られています。 もし暖かい場所が見つからないと、自分自身では発熱ができないのでおそらく死んでしまうでしょう。 
    子ウサギも自分で発熱することができないので、病気になると体温を上げるために暖かい場所を探します。成長したウサギは感染すると発熱しますが、もし解熱剤を与えて熱が上がらないようにしてしまうと、たぶん死んでしまうでしょう。
  3. 梅毒患者の中に、マラリアに罹ると症状が好転する者がいること、マラリアが流行している地域では梅毒は稀であることに、鋭い観察者、医師ワーグナー・ヤウレックは気付きました。現代では考えられませんが、彼は、何千人もの梅毒患者に故意にマラリアを感染させました。普通なら梅毒患者100人中治るのは一人なのに、治癒率が30%という偉大な成果を挙げ、1927年のノーベル生理・医学賞を受賞しました。
  4. 水痘にかかって発熱している子どもに解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを与えると、偽薬(砂糖を入れた錠剤)を飲んだ同じ症状の子どもより、治るのに約1日長くかかったという研究報告があります。
  5. 56人のボランティアに、かぜのウイルスを鼻腔に噴霧しました。約半数には中身を教えずに解熱鎮痛剤を与え、残りの者には砂糖を入れた外見は同一のカプセルを与えました。後者は抗体反応が高く鼻づまりや咳が少なく、ウイルスを人に感染させる期間も短かったのです。
  6. 「発熱が起きる途中で解熱剤を使って止めてしまうと、患者がアナフィラキシーショックを起こし易くなるかもしれない」と、ワシントン大医学部D・スティーブンス教授は発表しました。解熱薬は、感染に対するからだの反応を調節するメカニズムを邪魔する可能性があり、アナフィラキシーショックで死亡することもあると報告しました。

(2)「風邪のお熱は2泊3日」(勝又医師の造語)、発熱のしくみ

  1. 生物は、ウイルスや病原菌などの病原体に侵入されると、侵入部位から咳や鼻汁や下痢で体外へ追い出し、感染現場の鼻腔、気道、腸粘膜などで戦って消滅させようとします。これが免疫活動です。
  2. 免疫には生まれつきの自然免疫と、感染のつど働く獲得免疫があって、後者は細菌に対して主に白血球、ウイルスには主にリンパ球が対応し、細胞内に取り込んで溶かしたり、抗体を産生し抗原抗体反応により病原体を不活化(殺す)する働きです。
  3. 細菌やウイルスなどの病原体は、体内で温度・水分・栄養が揃うと、驚異的な早さで増殖します。例えば大腸菌は、20分に1回分裂すると1個の菌が12時間後に10億個になります。これが数千個も侵入すれば12時間後にはその10億倍に増えてしまうのです。
  4. この病原体も、環境が37.5~38.5℃以上になると分裂増殖が止まることがわかりました。人間の男性も高熱が出たときは生殖活動が不能になるといわれます。
  5. 恒温動物は、脳内に体温調節中枢(体温センター)を持っています。ここは、病原体との戦いが始まると免疫システムから来た要請に答えて全身に体温上昇を指令します。すると、まず皮膚表面の血管を収縮して体温の放散を防ぎ、さらに褐色脂肪の分解を開始し発熱が起こるのです。
  6. 発熱により病原体の増殖が停止するので、病原体との戦争はこちらが有利になります。
  7. 病原体をほとんど消滅させると解熱します。解熱すれば他人への感染はまずありません。解熱後に発疹が出ることがありますが、多くは戦いの後始末なので放置すれば消えます。
    ただし、水痘の水疱から出るウイルスや水いぼの汁のウイルスはうつります。

(3)脳はなぜ熱で壊れないのでしょうか?

  1. 人体の組織は、脳神経細胞を含めて、風邪の発熱ぐらいでは障害を受けません。
    体温センターは脳中央深部の視床下部にあるため、脳が壊れるような高熱を出す ことはありません。

(4)熱が出ている子どもにどうしてあげればいいのでしょう?

  1. どんな病気でも年齢がいくつでも、患者さんが楽にしている方が早く治ります
    なぜか日本では「ガマンさせる方が良くなる」という間違いの思い込みがありますね
  2. 目に見えない汗が出るので、塩分も必要です!水分だけ飲んでいると体内の電解質バランスが崩れて免疫活動が不調になります。飲みものは経口補水液と書いてあるものが最適です。OS1、アクアライト、OS1ゼリー、その他も売られています
  3. 哺乳している乳児では、万能の飲みものである母乳やミルクを欲しがるだけあげましょう

(5)しかし、高熱を放置すればよいという訳ではありません。熱を下げることが患者さんや家族にとっていい場合もあります。

(6)解熱剤はいつ使えばいいのでしょうか?

  1. 夜間に寝付けないなど、辛そうなら熱を下げてあげましょう。
    解熱剤の使用を、体温の高さで決めるのはあまり適切ではないでしょう。同じ40℃でも、ウイルスの種類によって症状が大きくちがいますから。
    また、熱があるときにはほとんどの場合、着るものや掛けるものを薄くしてあげるとお子さんは楽になります。寒そうなら暖かくしてあげましょう。